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小諸宿粂屋はかつて北国街道を行き交った人々の宿で、宿の出入り口は格式ある雰囲気を醸し出し、まるでタイムスリップしたような感覚を味わえます。そんな素敵な宿場をご紹介します。
北国街道
北国街道といえば、長野県の追分宿(中山道と北国街道の分岐点)から新潟県の出雲崎宿(佐渡からの金・銀の荷揚げ地であり、その金・銀は江戸に運ばれたため、黄金の道ともいいます)までの間の街道のことで、江戸時代には宿場町として栄えていました。
*北国街道については諸説あり、新潟湊までを含むとされていたり、新潟湊より上も含む説もあります。また、現在の北陸道の一部も北国街道で、滋賀県 鳥居本で中山道と合流しています。
元治元年6月26日に北国街道小諸宿脇本陣・粂屋に越後高田の藩士が泊まったという記録が残されています。元治元年といえば幕末の不穏な空気が漂っている真っ只中のことで、しかも1864年6月といえば、京で池田屋事件(元治元年6月5日)が起きていて、その後禁門の変(元治元年7月19日)が起きるころです。
なぜこのころ高田藩士が北国街道で宿泊していたかというと、14代将軍徳川家茂が上洛するにあたり、徳川四天王の一人、榊原家が御先手(榊原家は代々お先手)を勤めることになり、藩主の榊原政敬に従い上洛していたからでした。家茂の上洛は3度ありましたが、2度目の上洛のときのことが高田藩士の日記で残されています。
高田藩士は、文久三年(1863年)12月5日に高田を出立して、12月12日に江戸に到着、12月15日に江戸を出発して12月30日京都伏見に着きました。
高田藩主榊原政敬は12月8日に江戸を出発し東海道を通って12月26日に大坂に到着しています。高田藩士たちは、12月4日に『明日の5日54人高田を出立 12月8日までに江戸に着くように』という指示だったようですが、高田(現 新潟県上越市)から江戸(東京)までは290kmあり、1日40kmあるいても7日以上かかる計算なので到底無理でした。御供が間に合わず、藩主が急いで江戸を出発したのは、家茂の上洛がそれだけ急に決まったということでしょうか。
家茂は12月27日に軍艦で江戸を出立して、文久四年1月8日に大阪城へ入っています。そして家茂が上洛するにあたり高田藩主 榊原政敬のもと将軍警護が始まります。
家茂が上洛している間、京都でなにがあったかというと、尊皇攘夷派たちが8月18日の政変により御所から追放されたあと、公武合体派の一橋慶喜、松平春嶽、松平容保、島津久光、山内容堂、伊達宗城(むねなり)らによって参与会議が開かれますが、意見が合わず数カ月で解散となってしまいます。その時の京都の様子も藩士たちに噂として広がっていたようです。
元治元年5月16日 家茂は大阪城を出発、その後軍艦に乗り、江戸に5月20日に到着しました。これにより5月17日 榊原政敬も大坂を出発し、東海道を通り6月11日江戸に到着しました。
高田藩士は6月22日 江戸を出立し板橋宿、蕨宿、浦和宿、大宮宿、上尾宿、、、そして追分を過ぎ6月26日小諸宿脇本陣『粂屋』に宿泊しました。そのときの記録がこちらです。
小諸宿 粂屋十右衛門方泊り 〆里数七里半十六丁 と日記には記録されています。1里は約4kmで1丁は109mですから前の坂本宿から約32km歩いたようです。
元治元年7月1日 高田藩士は無事高田に到着します。
この後 京都では新撰組の池田屋事件(7月8日)、禁門の変(7月19日)が起こり、第二次長州征伐が始まり、戊辰戦争へと突入していくことになります。この日記を書いた高田藩士は戊辰戦争にも行っており、そのときの日記も残っています。徳川家茂の上洛時には高田藩は将軍警護という役目でしたが、戊辰戦争になるとなぜか新政府側の先鋒として戦わされることになります。
小諸宿は北国街道沿いに位置する歴史ある宿場町で、多くの旅人に親しまれてきました。町全体が文化財としての価値を持ち、訪れる人を江戸時代の空気に導いてくれるようなところです。そして江戸時代に高田藩士が泊まったとされる『粂屋』ですが、脇本陣の建物をリノベーションして現在も宿として宿泊することができます。この宿の中にはカフェも併設されているのでカフェのみの利用も可能です。小諸駅から徒歩5分という好立地なので観光の途中に立ち寄ることもできそうです。ぜひ江戸時代から変わらない建物と豊かな歴史を感じてみてはいかがでしょうか。
脇本陣の宿・粂屋
宿泊の営業日 木曜日・金曜日・土曜日・日曜日(月曜日の宿泊は5名以上~5日前までに予約)
定休日 火曜日・水曜日
駐車場 宿泊客の方はスタッフが案内してくださいます
茶屋 粂屋(カフェ)
住所 長野県小諸市市町1-2-24
営業時間 11時~16時
定休日 火曜日・水曜日
駐車場 小諸市営「市営小諸駅駐車場」2時間無料
住所 長野県小諸市相生町1ー1-1
アクセス
電車 小諸駅から徒歩5分(300m)
車 上信越自動車道 小諸ICから約7分